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大阪マネー会!社会保険労務士のための働き方改革ガイド

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働き方改革とはどのような施策か|法案の改正点や追加された新制度を解説

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2025年7月4日

働き方改革とは?改正点や新制度を解説

働き方改革は政府が数年かけて推進している施策の1つで、近年の労働環境を大きく改善させると共に、事業側にとってもメリットを生み出す取り組みです。

この記事では、働き方改革についての基本的な情報や施策に関係する法律の改正などを含めた、以下の点をまとめました。

  • 働き方改革は働き手が柔軟な働き方を選択できる環境を作り、人材を確保して生産力や業績を向上させ、結果的に企業の利益を増加させる良循環を生み出す
  • 働き方改革の一環で年次有給休暇の時季指定や時間外労働の上限規制、非正規雇用労働者の待遇規定が働き手に有利な形で改定された
  • 働き改革の取り組みに対応する上で必要な資金や対応によって状況改善が見られた事業主は、申請すれば助成金をもらえる
  • 働き方改革推進支援センターでは無料相談で働き方改革の取り組みに対する支援が受けられる

働き方改革の施策や変更された点について把握したい人は、参考にしてください。

働き方改革は労働環境の改善から人材の確保や生産力の向上を目指す

働き方改革とは、働き手がそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方を選択できるようにして、生産力の向上や就業機会の拡大を目指す施策の総称です。

2018年6月に働き方改革法案が成立し、2019年4月には働き方改革関連法として以下の法令が順次改正されていきました。

  • 労働基準法
  • じん肺法
  • 雇用対策法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
  • 労働時間などの設定の改善に関する特別措置法
  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  • 労働契約法
  • 健康保険法
  • 職業安定法
  • 生活保護法
  • 出入国管理及び難民認定法
  • 駐留軍関係離職者等臨時措置法
  • 障害者の雇用の促進等に関する法律
  • 住民基本台帳法
  • 職業能力開発促進法
  • 農村地域への産業の導入の促進等に関する法律
  • 雇用保険法
  • 漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法
  • 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法
  • 本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法
  • 沖縄振興特別措置法
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
  • 地方公務員法
  • 厚生年金保険法
  • 社会保険労務士法
  • 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
  • 建設労働者の雇用の改善等に関する法律
  • 港湾労働法
  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
  • 地方公務員の育児休業等に関する法律
  • 独立行政法人通則法
  • 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律
  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
  • 厚生労働省設置法

働き方改革の対象は企業全体になりますが、厚生労働省では特に日本国内雇用の7割を占める中小企業及び小規模事業者に対して、働き方改革の重要性を説いています。

働き方改革に関連する項目における中小企業の範囲は、以下の項目に当てはまる企業です。

業種資本金の額又は出資の総額常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業
(医療・福祉等を含む)
5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種
(製造・建設・運搬業等)
3億円以下300人以下

近年では人手不足が問題となっている中小企業や小規模事業者ですが、働き方改革による労働環境の改善などを行った場合、働き手にとって魅力的な職場が形成されます。

職場環境の整備をして人材を確保すると生産力や業績が向上し、企業の利益が増加してさらに働き手の育成や職場の環境の改善に充てられるという好循環を完成させられるのです。

働き方改革の一環として労働基準法を始めとした法案の改正や追加が行われた

働き方改革の一環。法案の改正や追加が行われた

労働者を雇用するにあたって企業側は様々な対応を行う必要があり、働き方改革によって一部の法案には新しい規定の追加や書類の変更が行われています。

36協定届の新様式時間外労働または休日労させる際に必要な36協定について、2021年4月1日から届け出の様式が新しくなった変更点としては、主に以下の2点
・使用者の押印と署名の廃止(記名は必要)
・協定当事者にあたる労働者代表について、チェックボックスが新設
労働条件の交付労働契約を締結する際は労働者に対して、労働条件を明示したものを原則書面で交付する労働者が希望した場合はFAXやメール、SNSなどでも明示可能明示すべき労働条件は以下の通り
・労働契約の期間
・就業の場所及び従業すべき業務
・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無など、労働や休日の時間に関する事項
・賃金や昇給に関する事項
・解雇を含む退職に関する事項
・退職手当に関する事項
・最低賃金額に関する事項
・労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
・安全及び衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰及び制裁に関する事項
・休職に関する事項
就業規則の作成・届出雇用形態にかかわらず労働者を10名以雇用している場合、就業規則の作成と届出が必要
法定帳簿の作成・保存労働者を雇用する事業主は主に以下の4つの法定帳簿の作成と保存が義務付けられている
・賃金台帳
・労働者名簿
・出勤簿(労働時間を記録した帳簿)
・年次有給休暇管理簿
雇用形態に関わらない公正な待遇の確保パートやアルバイトなど非正規雇用労働者を雇用している場合、不合理な待遇差がないようにする必要がある
2021年4月以降にパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法で改正が行われた

上記の項目は働き方改革を進める上で前提となる部分であり、遵守できていない場合は法律的に問題がある企業です。

次の項目から働き方改革の一環で、労働基準法を始めとした改正された内容について詳しく紹介します。

年次有給休暇の時季指定は使用者が毎年5日間確実に取得させる必要がある

労働基準法における年次有給休暇の時季指定について、2019年4月から時季指定の義務が新たに設けられました。

これまでの内容改正後の内容
事業主は対象となる労働者が年次有給休暇を請求した場合、指定した時季に与えなければならない
対象となる労働者は、年次有給休暇の付与日数が10日以上で、直近1年における出勤率が8割以上かつ半年間(6ヶ月)継続して雇用されている全ての労働者
左記の内容に加えて、使用者は対象となる労働者に対して、毎年年次有給休暇の日数の5日間は確実に取得させなければならない
取得方法については、労働者自らの請求、計画年休及び使用者の時季指定

労働者は管理監督者やアルバイト、パートタイマーが対象になる一方で、派遣社員は派遣元が休暇を管理するなど、例外となる働き手もいます。

具体的な年次有給休暇の時季指定の適用例については、以下の通りです。

適用例同年の10月1日翌年の9月30日
4月1日に入社した場合年次有給休暇が10日間付与される
この日が時季指定の基準日となる
この日までの1年間に5日間以上取得させなければならない

使用者が5日間の年次有給休暇を取得させる場合、労働者に取得時季の意見を聴取して、意見を尊重した上で日付や期間を指定します。

上記の内容に加えて、使用者は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成して、3年間保存しなければいけません。

年次有給休暇の時季指定について違反した場合、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科される可能性があります。

時間外労働の上限規制は行政指導から法律上の上限が明確に定められた

時間外労働の上限規制が明確に

労働基準法における時間外労働の上限規制について、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から残業時間の上限が定められました。

これまでの内容改正後の内容
法律上に残業時間の原則はあったが、上限が設けられているわけではなく、行政指導が行われるのみだった
原則として、年間6ヶ月まで月45時間、年間360時間以内の場合、法定労働時間を超えても良い
法律上に残業時間の上限を定めて、労使が合意する場合でも以下の時間を越えてはならない
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む2ヶ月~6ヶ月平均)
・月100時間未満(休日労働を含む)年間6ヶ月まで月45時間以内の場合、法定労働時間を超えても良い
原則は据え置き

複数月平均80時間以内は、1日あたり4時間程度の残業に相当する時間です。

上限規制に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科される可能性があります。

法改正後もある程度の残業時間は確保されていますが、上限が定められたことで企業側も残業時間を意識する必要が出てきました。

非正規雇用労働者が同一労働かつ同一賃金になるような規定が追加された

3つの法律におけるパートや有期労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者について、正社員との不合理な待遇差を禁止する項目が追加されました。

改正の施行は2020年4月から、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法は2021年4月1日から適用されています。

パートタイム労働法や労働契約法、労働者派遣法における整備内容としては、以下の3点が該当します。

  1. 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
  2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  3. 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

それぞれの内容について、次の項目から詳しく紹介します。

非正規雇用労働者に対する不合理な待遇差や差別的取扱いが禁止された

不合理な待遇差をなくすための規定の整備については、同一賃金ガイドラインにおいて以下の内容が禁止されます。

均等待遇規定
(不合理な待遇差の禁止)
均等待遇規定
(差別的取扱いの禁止)
非正規雇用労働者に対して、以下の違いに応じた範囲で待遇を決定する必要がある
・ 職務内容
・ 職務内容
・配置の変更の範囲
・ その他の事情
非正規雇用労働者に対して、以下の条件が同じ場合、正社員と同じ待遇にする必要がある
・職務内容
・職務内容
・配置の変更の範囲

上記に加えて、派遣労働者については、以下の2つのいずれかの確保が義務化されました。

  •  派遣先の労働者との均等・均衡待遇
  • 一定の要件を満たす労使協定による待遇

一定の要件としては、同じ業務内容で働く場合に一般労働者の賃金に対して、派遣労働者の賃金が同等以上にすることが例として挙げられます。

パート有期労働者派遣
均衡待遇規定規定の解釈の明確化規定の解釈の明確化規定あり+労使協定
均等待遇規定規定あり規定あり規定あり+労使協定
ガイドライン規定あり規定あり規定あり

非正規雇用労働者の待遇に関する規定は、以前も規定する項目はありましたが、改正後はより明確に規定の解釈が記されるようになりました。

非正規雇用労働者に対する雇用管理上の措置や待遇について説明義務が生じる

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化については、事業者は非正規雇用労働者から待遇に関する以下の内容について説明を求められた場合、説明しなければいけません。

  • 雇用管理上の措置の内容(雇入れ時)
  • 待遇決定に際しての考慮事項(求めがあった場合)
  • 待遇差の内容・理由(求めがあった場合)

待遇差の内容や理由についてはそれまで説明義務が明記されていませんでしたが、改正後は非正規雇用労働者全体で説明義務が生じます。

以前の法律では有期労働者の場合、上記の全てに関して事業者側の規定がなかったため、改正により説明義務が生じるのは大きな変化です。

非正規雇用労働者に対する行政ADRが整備されて手続きの対象が広がる

裁判外紛争解決手続とは、法的なトラブルの解決手段である仲裁や調停などの総称であり、英訳の略称ADRとも呼ばれる場合もあります。

ADRのうち都道府県労働局によって行われるものは行政ADRと呼ばれており、事業主と労働者の間にトラブルが発生した場合、解決のために助言や指導を行います。

紛争の解決が難しい場合は、都道府県労働局が間に入って無料かつ非公開のADRを行うため、一方的な解雇などの労働者側が不利になる状況を防げるのです。

そんな行政ADRについて、非正規雇用労働者の規定が整備され、均衡待遇や待遇差に関する説明義務についても行政ADRの対象になりました。

以前の法律では有期労働者が対象外であり、パートと派遣労働者も部分的な規定のみでしたが、改正後は正社員とほぼ変わらない状態に変わりました。

働き方改革では新しい制度の追加や既存制度の見直しも多数行われた

働き方改革における労働基準法以外の部分で改正や新規追加された項目については、以下の通りです。

施策内容
勤務間インターバル制度2019年4月から施行
1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休憩時間を設ける制度
インターバルを設けて勤務を制限することで、労働者は一定の生活時間や睡眠時間を確保できる
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)の改正により努力義務化される
客観的な記録による労働時間の把握2019年4月から施行
労働安全衛生法の改正により法的義務化される
厚生労働省令が定める客観的な記録方法としては、タイムカードやコンピューター等の電子計算機を使用した記録などがあり、作成した上で3年間保存するための措置を講じなければならない
フレックスタイム制の清算期間の延長2019年4月から施行
一定の期間内(清算期間)に定められた総労働時間の範囲で、労働者自身が始業から終業までを決められるフレックスタイム制が対象
従来は清算期間が1ヶ月だったが、働き方改革の規定変更により3ヶ月に延長される清算期間が延びた場合、月を跨いで労働時間を調整できるため、制度の柔軟性が高まった
高度プロフェッショナル制度2019年4月から施行
高度な専門的知識を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者が対象
労使委員会の決議や労働者本人の同意を前提に、労働基準法に定められた項目を適用せず自由に働ける
産業医・産業保健機能の強化2019年4月から施行
事業場で専門的な立場から指導や助言を行う産業医について活動環境の整備を行い、同時に健康相談の体制や情報の取り扱いも整備する
産業医等の強化に合わせて、長時間労働者に対する面接指導などの労働者の健康管理についても対応や情報などを強化する
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げ2023年4月から施行
それまでの制度では1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合、大企業は50%、中小企業は25%賃金を割増する必要があった
改正後は中小企業も割増賃金率が50%に引き上げられた

多くの法案や制度は2019年4月から施行されており、全ての企業に当てはまる項目ではありませんが、それまでの内容をより適切な内容に変更しています。

働き方改革の一環で支援に必要な費用や改善に合わせた助成金を申請できる

費用が確保できる。働き方改革推進支援助成金

非正規雇用労働者も含めた労働者全体に対して有用な働き方改革の施策ですが、事業者側では施策に対応するための費用の確保が問題となります。

新しい法案に対応するためのシステムの形成や人事の移動などが少なからず必要であり、企業によってはそれらの変更を行う余裕がない場合があるのです。

そんな状況に対応するため、厚生労働省は働き方改革の施策へ対応しようと取り組む中小企業に対して、働き方改革推進支援助成金を支給しています。

一方で、既に働き方改革の施策に該当する取り組みを行った場合も、業務改善助成金やキャリアアップ助成金といった形で助成金を申請できます。

働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金には5つのコースが用意されており、それぞれ助成対象となる事業主や助成額が異なっています。

コース区分助成対象
適用猶予業種等対応コース労働者災害補償保険の適用事業主で、成果目標や就業規則の整備などの条件を満たす企業のうち、以下の4つに該当する中小企業
・建設業
・運送業
・病院等
・砂糖製造業
労働時間短縮・年休促進支援コース労働者災害補償保険の適用事業主で、成果目標や就業規則の整備などの条件を満たす中小企業
勤務間インターバル導入コース労働者災害補償保険の適用事業主で、36協定の締結や就業規則の整備などの条件を満たす企業のうち、以下のいずれかに該当する小企業
・勤務間インターバルを導入していない事業場
・既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場で、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
・既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
労働時間適正管理推進コース労働者災害補償保険の適用事業主で、36協定の締結や就業規則の規則満たす企業のうち、以下の項目を満たす中小企業
・賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していない
・賃金台帳等の労務管理書類について、5年間の保存が就業規則等に規定されていない
団体推進コース法律で規定する団体や要件を満たしている共同事業主のうち、1年以上の活動実績があるもの

コースごとに助成対象となる取り組みや成果目標の設定が用意されており、助成される際の金額は成果目標の達成状況に応じて変化します。

適用猶予業種等対応コースは猶予期間よりも前に対応すると助成される

適用猶予業種とは、36協定における時間外労働の上限規制の適用が2024年3月31日まで猶予されている業種です。

本来はその猶予までは上限規制に対応する必要はありませんが、対応した場合はこのコースに申請して助成金をもらえます。

コースにおける助成額と成果目標は、以下の通りです。

助成額以下のいずれか低い方の額
・成果目標1から4の上限額および賃金加算額の合計額
・対象経費の合計額×補助率3/4
成果目標1成果目標1は業種によって2パターンが存在する
(1):申請した時点で有効な36協定に沿った時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定した上で所轄労働基準監督署長に届出を行う建設・運送・砂糖製造業が選択可能
(2):(1)と同様に36協定に沿った縮減や届出の提出した上で、月80時間以下に上限を設定
病院等が選択可能
成果目標24週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させる
建設業が選択可能
成果目標39時間以上の勤務間インターバル制度の規定を新たに導入する
運送業、病院等が選択可能
成果目標4病院等が選択可能で、産業医・産業保健機能の強化の取り組みの沿った以下の全てを実施する
・労働管理体制の構築等
・医師の労働時間の実態把握と管理
追加成果目標指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げる

追加成果目標については、団体推進コース以外のコースで共通して追加で設定できます。

成果目標1(1)については、実施前と実施後の時間外労働数の設定によって助成の上限額が変わります。

成果目標1(1)時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月60時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月60時間以下に設定
(実施後)
250万円200万円
時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定
(実施後)
150万円–

一方、成果目標1(2)では実施前の時間外労働数の設定が参照されます。

成果目標1(2)時間外労働時間数等を月100時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月90時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月80時間以下に設定
(実施後)
250万円200万円150万円

成果目標2から4の達成後の上限額については、以下の通りです。

対象上限額
成果目標21日増加ごとに25万円
最大で100万円まで
成果目標39時間以上11時間未満:新規導入の場合100万円、適用範囲の拡大等の場合は50万円
11時間以上:新規導入の場合150万円、適用範囲の拡大等の場合は75万円
成果目標450万円

さらに、賃金額の引き上げによる追加報酬は、常時使用する労働者数と引き上げた人数によって金額が変わります。

引き上げ人数常時使用する労働者数が30人を超える常時使用する労働者数が30人以下
3%以上引き上げ1~3人:15万円
4~6人:30万円
7~10人:50万円
11人~30人:1人あたり5万円(上限150万円)
1~3人:30万円
4~6人:60万円
7~10人:100万円
11人~30人:1人あたり10万円(上限300万円)
5%以上引き上げ1~3人:24万円
4~6人:48万円
7~10人:80万円
11人~30人:1人あたり8万円(上限240万円)
1~3人:48万円
4~6人:96万円
7~10人:160万円
11人~30人:1人あたり16万円(上限480万円)

労働時間短縮・年休促進支援コースは有給や特別休暇の導入で助成される

職種に限らず選択できる。有給や特別休暇の導入っで助成

労働時間短縮・年休促進支援コースは、年次有給休暇の時季指定を始めとした有給や特別休暇の導入が中心になっていて、こちらは職種に限らず選択できます。

コースにおける助成額と成果目標は、以下の通りです。

助成額以下のいずれか低い方の額
・成果目標1から4の上限額および賃金加算額の合計額
・対象経費の合計額×補助率3/4
成果目標1申請した時点で有効な36協定に沿った時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定した上で所轄労働基準監督署長に届出を行う
成果目標2年次有給休暇の時季指定について、新しく導入する
成果目標3時間単位の年次有給休暇の導入と特別休暇の規定のいずれか1つ以上を導入する
追加成果目標指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げる

成果目標1については、適用猶予業種等対応コースと同じく実施前と実施後の時間外労働数の設定によって助成の上限額が変わります。

成果目標1時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月60時間を超えて設定している事業場
(実施前)
時間外労働時間数等を月60時間以下に設定
(実施後)
200万円150万円
時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定
(実施後)
100万円–

成果目標2と3の達成後の上限額は、以下の通りです。

対象上限額
成果目標225万円
成果目標325万円

追加成果目標についても、上限額は適用猶予業種等対応コースと共通しています。

引き上げ人数常時使用する労働者数が30人を超える常時使用する労働者数が30人以下
3%以上引き上げ1~3人:15万円
4~6人:30万円
7~10人:50万円
11人~30人:1人あたり5万円(上限150万円)
1~3人:30万円
4~6人:60万円
7~10人:100万円
11人~30人:1人あたり10万円(上限300万円)
5%以上引き上げ1~3人:24万円
4~6人:48万円
7~10人:80万円
11人~30人:1人あたり8万円(上限240万円)
1~3人:48万円
4~6人:96万円
7~10人:160万円
11人~30人:1人あたり16万円(上限480万円)

勤務間インターバル導入コースは導入済みでも適用範囲や時間延長で助成される

勤務間インターバル導入コースは、名前の通り働き方改革の新制度として導入された業務間インターバルの新規導入や適用範囲の変化から助成されます。

コースにおける助成額と成果目標は、以下の通りです。

助成額対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額
成果目標以下のいずれかに取り組む
・9時間以上の勤務間インターバル制度に関する規定を労使協定または就業規則に定める新規導入
・9時間以上の勤務間インターバル制度を導入済みで、労使協定または就業規則対象となる労働者の適用範囲を拡大すると規定する
・9時間以上の勤務間インターバル制度を導入済みで、労使協定また就業規則に当該休息時間数を2時間以上延長すると規定する
追加成果目標指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げる

成果目標達成後の上限額は、導入した急速時間数と新規導入かそれ以外かで金額が変わります。

対象新規導入の場合適用範囲の拡大・時間延長
9時間以上11時間未満80万円40万円
11時間以上100万円50万円

賃金の引き上げの追加成果目標達成後の上限額は、以下の通りです。

引き上げ人数常時使用する労働者数が30人を超える常時使用する労働者数が30人以下
3%以上引き上げ1~3人:15万円
4~6人:30万円
7~10人:50万円
11人~30人:1人あたり5万円(上限150万円)
1~3人:30万円
4~6人:60万円
7~10人:100万円
11人~30人:1人あたり10万円(上限300万円)
5%以上引き上げ1~3人:24万円
4~6人:48万円
7~10人:80万円
11人~30人:1人あたり8万円(上限240万円)
1~3人:48万円
4~6人:96万円
7~10人:160万円
11人~30人:1人あたり16万円(上限480万円)

労働時間適正管理推進コースは成果目標の要件を全て達成する必要がある

要件を全て達成する。労働時間適正管理推進コース

労働時間適正管理推進コースは、法定帳簿の作成や保存について新しいシステムの導入や就業規則の規定を必要としています。

コースにおける助成額と成果目標は、以下の通りです。

助成額成果目標達成時の上限額を100万円として、対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額
成果目標以下の全てを達成する
・賃金台帳等について、勤怠管理と賃金計算等をリンクさせ、新たに作成・管理・保存する統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用する
・賃金台帳等の労務管理書類を5年間保存すよう就業規則等に規定する
・「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者及び労務管理担当者に対して実施する
追加成果目標指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げる

他のコースとは異なり、成果目標に記載された内容を全て実施する必要があります。

追加成果目標達成後の上限額については、以下の通りです。

引き上げ人数常時使用する労働者数が30人を超える常時使用する労働者数が30人以下
3%以上引き上げ1~3人:15万円
4~6人:30万円
7~10人:50万円
11人~30人:1人あたり5万円(上限150万円)
1~3人:30万円
4~6人:60万円
7~10人:100万円
11人~30人:1人あたり10万円(上限300万円)
5%以上引き上げ1~3人:24万円
4~6人:48万円
7~10人:80万円
11人~30人:1人あたり8万円(上限240万円)
1~3人:48万円
4~6人:96万円
7~10人:160万円
11人~30人:1人あたり16万円(上限480万円)

団体推進コースには他のコースとは異なる取り組みから支給対象に当てはまる

団体推進コースは事業主団体や共同事業主を対象にしており、他のコースと同じく時間外労働の削減や賃金引き上げなどを行っていきます。

コースにおける助成額と成果目標は、以下の通りです。

助成額以下のいずれか低い方の額
・対象経費の合計額
・総事業費から収入額を控除した額
・上限額500万円
成果目標支給対象となる取り組みについて、事業主団体等が事業実施計画で定める時間外労働の削減または賃金引上げに向けた改善事業の取り組みを行い、構成事業主の2分の1以上に対してその取り組みまたは取り組み結果を活用する

支給対象となる取り組みについては、市場調査の事業や新ビジネスモデル開発・実験の事業など他のコースにはない実施項目があります。

業務改善助成金は生産性向上と共に賃金の引き上げを行った場合に助成される

業務改善助成金は中小企業や小規模事業者を対象として、生産性向上のための取り組みを行って、事業場内で最も低い賃金を引き上げた場合に支給される助成金です。

生産性向上のための取り組みとしては、機械設備の投入といった設備投資や人材育成費用などが該当します。

助成金額は生産性向上のための取り組みにかかった費用に、事業場内最低賃金を参照した助成率をかけた金額と助成上限額を比較して、いずれか低い方の金額が支給されます。

助成率申請を行う事業場における賃金引き上げ前の事業場内最低賃金を参照した以下の倍率
・870円未満:9/10
・870円以上920円未満:4/5
・920円以上:3/4
生産性を向上させた事業者の申請については、生産性要件を満たしたとして、通常よりも有利な倍率の助成率が適用される
・870円以上920円未満:9/10
・920円以上:4/5
助成上限額事業場内最低賃金の引き上げ額と対象となる労働者人数、事業場内の規模によって上限額が変わる
引き上げ金額は30円・45円・60円・90円のコース区分がある

引き上げ金額のコース区分ごとの助成上限額は、以下の通りです。

コース区分事業場規模30人以上事業場規模30人未満
30円以上1人:30万円
2~3人:50万円
4~6人:70万円
7人以上:100万円
10人以上:120万円
1人:60万円
2~3人:90万円
4~6人:100万円
7人以上:120万円
10人以上:130万円
45円以上1人:45万円
2~3人:70万円
4~6人:100万円
7人以上:150万円
10人以上:180万円
1人:80万円
2~3人:110万円
4~6人:140万円
7人以上:160万円
10人以上:180万円
60円以上1人:60万円
2~3人:90万円
4~6人:150万円
7人以上:230万円
10人以上:300万円
1人:110万円
2~3人:160万円
4~6人:190万円
7人以上:230万円
10人以上:300万円
90円以上1人:90万円
2~3人:150万円
4~6人:270万円
7人以上:450万円
10人以上:600万円
1人:170万円
2~3人:240万円
4~6人:290万円
7人以上:450万円
10人以上:600万円

事業場規模のうち10人以上の助成上限額が適用される事業者は、事業場内最低賃金が920円未満の特例事業者に限られます。

キャリアアップ助成金は正社員化や処遇改善した場合に助成される

キャリアアップ助成金は有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者を対象に、事業所内でキャリアアップした際に事業主へ支給される助成金です。

助成対象となる取り組みとしては、正社員化支援の2つと処遇改善の4つの計6つのコースが用意されています。

コース助成対象
正社員化コース有期雇用労働者等を正社員化した事業主
障害者正社員化コース障害者の雇用を促進と職場定着のために以下のいずれかの措置を継続的に講じた事業主
・有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換する
・無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する
賃金規定等改定コース有期雇用労働者等の基本給に関する賃金規定などを3%以上増額改定し、昇給させた事業主
賃金規定等共通化コース有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の賃金規定を新規で作成し、適用した事業主
賞与・退職金制度導入コース有期雇用労働者に対して、賞与もしくは退職金制度、またはその両方を導入した事業主
短時間労働者労働時間延長コース短時間労働者の週所定労働時間を延長して、新たに社会保険に加入させた事業主

支給申請する際はキャリアアップ計画という届け出が必要であり、該当するコースに合わせた様式の書類を厚生労働省の公式サイトからダウンロードします。

正社員化支援コースの申請の流れは、以下の通りです。

  1. 取り組みを行う実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、労働局・ハローワークに提出する
  2. 計画を認定された後、その時点で正社員への転換規定が定められていない場合は、就業規則などを改定する
  3. 就業規則に基づいて有期雇用労働者等を正社員化する
  4. 正社員化してから6ヶ月間、賃金を支払う(正社員化前の6ヶ月と比較して3%以上の増額が必要)
  5. 賃金を支払った日の翌日から2ヶ月以内に労働局・ハローワークに支給申請を行う

正社員化した後に以前の賃金よりも増額した上で、6ヶ月分の賃金を支払う必要があります。

一方、処遇支援コースの申請の流れは、以下の通りです。

  1. 取り組みを行う実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、労働局・ハローワークに提出する
  2. 増額や賃金規定の改定など、それぞれのコースの要件になっている取り組みを実施する
  3. 取り組みを開始してから6ヶ月間、賃金を支払う
  4. 賃金を支払った日の翌日から2ヶ月以内に労働局・ハローワークに支給申請を行う

処遇支援でも申請する前に賃金の支払いが必要ですが、こちらは賃金の増額は求められていません。

働き方改革推進支援センターは無料相談から施策への助言や支援を行う

施策への助言や支援を行う働き方改革推進支援センター

働き方改革に関する悩みや不安について、全国に設置された無料相談窓口の働き方改革推進支援センターの利用が厚生労働省からおすすめされています。

働き方改革推進支援センターでは、主に以下の取り組みについて支援します。

  • 長時間労働の是正
  • 同一労働同一賃金等非正規雇用労働者の待遇改善
  • 生産性向上による賃金引上げ
  • 人手不足の解消に向けた雇用管理改善

具体的な支援内容や相談先については、以下の通りです。

来所相談・電話相談社労士などの専門家がセンターの相談ブースで対応
受付時間:原則平日9時~17時
メール相談各センターの公式ホームページから相談可能
企業への専門派遣
(訪問相談サービス)
社労士が会社まで訪問し、1回あたり2時間、3回を標準として無料相談を受け付ける
会社の状況把握から解決方法を提案し、提案後もフォローアップを行う
相談窓口への専門家派遣商工団体や市町村などで出頭相談会を開催する
セミナー開催働き方セミナーを随時開催中

相談のみであれば無料であり、改善のやり方や書類の手続きなどがわからない場合は労務管理の専門家である社労士がサポートしてくれます。

さらに、2023年からは建設業と情報サービス業専用の総合相談窓口が設置されました。

通常の相談窓口と同様の支援を行っており、対応する社労士はそれぞれの業界に関して経験や知見がある専門家となっています。

働き方改革は法案の改定や新制度の導入を助成金や相談窓口でサポートする

働き方改革では労働基準法の改定や勤務間インターバル制度を始めとした新規制度を導入するなど、労働者の勤務環境を改善する施策を複数行っています。

事業者も働き手の確保から人手不足の解消や生産性の向上が見込めて、最終的には利益に繋がる好循環を作り出す可能性も期待できます。

しかし、法案の改正などに対応する際には一定の費用が必要な企業もあり、全ての企業が容易に対応できるわけではありません。

そんな時は、厚生労働省が用意した助成金や無料相談窓口である働き方改革推進支援センターの活用によって、施策を解決するための助言や支援を受けられます。

働き方改革に関する悩みや不安がある場合は、全国の支援センターに相談して、適切な支援を受けながら新制度に対応していきましょう。

カテゴリ働き方改革

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